「すみません、そこのお父さんちょっと宜しいですか」
今日の仕事を終え自宅に帰ろうとする途中、長身の二人に声を掛けられた。共に黒いマスクを着け、白髪で長髪の彼女…彼か?声を聞く分には男性だ。その彼は色の付いたサングラスをかけている。双方やたら小綺麗でどうにも一般人には見えないスラリとした体型と雰囲気だった。ニコニコと愛想が良い。
「あの広告の前で写真を撮りたくて」
彼らが指さした先を見ると口紅の広告。ああ、確かあれは娘が好きなアイドルだな。確か今日がその口紅の発売日だとか何とかで朝から騒いでいたのを思い出した。娘が好きなんだが君達もこのアイドルのファンなのかい?と言うと二人は目を丸くしてお互いに顔を見合わせた後、白髪の彼が「はい、僕らも大ファンなんです」と嬉しそうに笑った。撮影を了承して二人からそれぞれスマホを受け取る。最新機器にモタモタしていると「ここを押したら撮れます」と丁寧に教えてくれた。おじさんはもう若者についていけないんだ、全く恥ずかしい限りである。無事に撮り終わるとお礼を言われ「今日出会えた記念に良かったらお父さんも僕らと一枚どうですか?」と誘われたが仕事終わりのこんなくたびれた格好で彼らと一緒に写真を撮るのは何だか気が引けた。隣に並びたくない。その代わり何故か二人を自分の携帯に収めることにした。
快く承諾してくれた二人は先程と違ったポーズをとり、マスクとサングラスを外した。…気のせいだろうか、気のせいだな。きっと疲れてるんだ。二人が後ろの広告のアイドルと瓜二つに見えるが気のせいだな。大ファンだと言っていたしただのそっくりさんだな、うん。そう思っておくことにしよう。
しかし本当に愛嬌のある二人だった、やたら仲も良い。あんなに美青年なんだから歩いているだけで女の子からモテるんだろうな。と、考えながら家路につく。お父さんおかえり!買えたの!と娘が今朝話していた口紅2本を興奮気味に見せてきた。良かったな、そういえばお父さん帰ってくる途中にその広告見たぞ。写真も撮ったんだ。娘に携帯の画面を見せると口をあんぐり開けたまま静止してしまった。ん?まさか間違えて違う画像を見せたか?グラビアアイドルのお姉ちゃんの写真だったか?焦って携帯を返してもらおうとすると娘が「どうして真ん中に本物のNovaが写ってるの!??!!」と大声で騒ぎ始めた。
そうか、あの二人は本物だったのか……………え?本物!?
Nova 4th Anniversary Episode.
(※モブ視点)
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